槍・高天原・笠縦走 山行記録その1 |
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7月18日 6:30上高地バスセンター−10:00槍沢ロッジ−12:00大曲−14:30殺生ヒュッテ |
梓川 | |
上高地といえば、昔は新宿から夜行列車を乗り継ぎ、新島々からバスで入ったものですが、今は夜行直行バスがお勧めです。池袋の集合場所に着くと尾瀬、白馬等へ向かう登山客も合わせ、大変な混雑ぶりです。翌早朝、快晴の上高地に到着しました。 観光客ででごったがえす上高地を後に、明神池、徳沢、横尾を過ぎると道は林道から山道に変わります。ここまで来ると登山者の世界です。一の俣出合いを通過。学生時代野口のパーティで初雪の涸沢からこの一の俣沢沿いに常念をつめ下山したことがありました。その後の台風で廃道になったと聞きましたが、道は夏草に覆われ踏み後すら残っていませんでした。 |
槍沢 | 大曲を過ぎると槍が見えてきます。槍沢に残る雪渓沿いに急坂は延々と続きます。ここで出会ったのが300人はくだらない高校生の大集団、。山の中では見知らぬ人でも挨拶する習慣がありますが、300人対1人ではたまりません。この挨拶攻撃を受け夜行の疲れがどっと出てきました。1時間おきのピッチは30分に、更に10分に縮まり、とうとう70歳は越えると思われる爺様に抜かれたことで観念しました。まだ日は高いが、今日の泊りは肩の小屋手前の殺生ヒュッテ。チェックイン2人目ですが、かまうことはありません。早々に手続きをしました。 |
槍沢上部 | |
貧乏学生だった私はテント山行ばかりで、山小屋に泊まったことはこれで3回目。殺生ヒュッテは200人収容の中規模の小屋ですが梅雨明け3連休の初日とあって、次々にやってくる登山者でごった返しています。寝るときは布団1枚に2人というスペースで寝返りも打てません。 山小屋では9時消灯ですが、夜中、目を覚ましてしまいました。ふらり小屋の外に出て見ると、空は満天の星空です。 |
7月19日 快晴 6:30殺生ヒュッテ−7:00槍の肩−10:00双六小屋−12:00三俣蓮華岳−14:00三俣山荘 |
槍の肩 | 今日は快晴。昨日は遠く遠く感じた槍の肩ですが、ルンルン気分で一気に登ります。槍の穂はちょうどラッシュアワーで行列が出来ていました。今回の目的は「高天ヶ原温泉」。登山者のへばりつくピークを尻目にさっさと西鎌尾根を下ります。槍ヶ岳までは登山者であふれ返ってましたが、この尾根に入ると、とたんに人気が無くります。まっさかさまの急なガレ場の下りが延々と続きます。20年前はガレ場にへばりつくように一面コマ草が咲き乱れていましたが、今はもう見られないのでしょうか? |
西鎌黒部の山々 | 西鎌槍を振り返る |
双六小屋から三俣蓮華へは3本ある登山道の中からお花畑と稜線歩きの両方を楽しめる中道コースを取りました。せっかくの展望コースも昼が近くなるとガスが出てきて視界がほとんど無くなりました。道はしっかりしていますが、ひとっこひとり通らず不安にかられます。12時、三俣蓮華岳のピークに到着。ここからは下り30分で小屋に着きます。幸いにもガスが晴れたピークでしばらくのんびりすることにしました。ここは北アルプスのほとんどの山が楽しめる絶景地です。 本日泊りの三俣山荘はハイマツ帯にぽっかり浮かんだ船のようなたたずまいです。小屋の正面に槍がそびえ気分が良いところです。連休中日とあって、明日下山の人は双六小屋を狙うためか結構空いています。昨日と違って一人一枚の布団が確保出来ました。もっとも指定された3階の部屋というのは屋根裏のこと。天井が低く梁に頭をぶつけてしまいます。その上、所々に剥き出しの釘がでています。通路も無く一番奥の人は手前の人の布団をふんずけながら、しゃがんで通らなければなりません。今日の行動で一番危険個所でした。三俣の3階に泊まったと言えば、登山者の中では箔がつくそうです。 |
7月20日 5:40三俣山荘−8:30雲の平山荘−10:45高天原峠−11:20高天原小屋 |
黒部源流 | |
朝です。せっかくの展望台もあいにくの霧でなにも見えません。三俣小屋から一旦下り、黒部川源流を目指します。有数のダムに水をたたえる黒部川ですが、ここ源流では石を飛んで渡れるような小さな流れです。ここを通過するのは多分3回目?中でも学生4年の時、たまたま付近で合宿中の後輩パーティーが事故を起し、パーティ再編の指示を伝える程原・喜安にばったり出合ったときにはビックリしました。新婚当時、妻と雲の平から鏡平に抜けたこともありました。 |
雲の平 | |
雲の平は名前の通り、ハイマツと火山岩に覆われた雲上の台地ですが、それだけに急な登り返しです。祖父岳への分岐を下ると雲の平テン場に出ます。ここのテント場は水場やトイレが完備している広々とした気持ちの良いテン場です。そんなテン場も昨夜からの雨で水浸し、早々に停滞を決め込んだのか?8時という山ではもう出発しているはずの時刻ですがいくつもテントが残っていました。 |
ガスの向うに水晶岳 | |
木道を行くとしばらく行くと雲の平山荘。昨日三俣3階で同室だった赤シャツの爺様に出会い、しばしおしゃべり。この方も目指すは高天原温泉です。高天ヶ原へは小屋の横から伸びる尾根道を下ります。天気がよければ薬師、水晶の絶好の展望台ですが今日はピークが雲に隠れ残念。もっとも相当な悪路で晴れていても景色どころでは無かったかもしれません。間隔が不揃いで時々足が届かないようなハシゴがあったり、けして上りには使いたくない悪路でした。 |
突然の土砂降りと高天原山荘に飛び込むのが殆ど一緒。小屋に入ってしまえばこっちのもののはずですが、ここではそうはいきません。秘湯中の秘湯である高天原温泉はこの先、歩いて15分です。1時、2時....まだ雨は止みません。意を決して行くしかない。周りの登山客も同じ気持ちで様子を伺っていたらしく、一人が立ち上がったら次々と後を追い、結局10人のオヤジがゾロゾロと雨具を着込み傘を差し、完全武装で温泉を目指します。この高天原は周りの縦走路から見て標高が一番低いところにあります。いわば壷の底。わざわざこの小屋に泊まる人は100%温泉目当ての人です。 温泉は、白く濁った露天風呂。なんせ土砂降りの雨の中だけあってぬるい!仲良く温まるようにと、唯一温かい場所である温泉引込口を囲み、10人のオヤジが湯船の中を順々に移動します。写真をとる者。ビデオをまわす者。酒を飲んでうなる者。ほとんど慰安旅行気分。見回すと43歳の私が、なんと一番若い。ここはどんなルートをとってもアプローチが長く、平気で長期休暇をとるオヤジサラリーマンしかこれない所です。 高天原山荘は小ぶりですがアットホームで気持ちが良い小屋です。普通の小屋では小さく仕切られた部屋に詰め込まれますが、ここはひとつの大部屋に皆が枕を並べて寝ます。(ひとりの人が鼾をかけば皆が被害者になりますが..)それになんと言っても「ランプの宿」。森の木々に降る雨音を聞きながら、ランプの灯りに照らされて、深い眠りに落ちて行きます。おやすみなさい........ |