白馬岳から雪倉岳
2003.8.1〜3




8月1日 白馬駅−猿倉−白馬尻−白馬岳−三国境−雪倉避難小屋
2日 雪倉避難小屋−雪倉岳−朝日岳−五輪尾根−蓮華温泉
3日 蓮華温泉−(bus)−平岩−(JR)−横浜
[単独 2泊3日 テント泊

 <お花畑 蓮華温泉

営業の私はせっせと得意先訪問のAPを取ります。狙うは中央線沿線の某社です。
「飯野さん、今週は木曜日に伺います。」
「どうしたの?この時期はいつも金曜日に来るじゃない。さては金曜日は年休かな?」
皆さんすっかりお見通しです。しがないサラリーマンの山登りはこうして始まります。

梅雨明け間近の三連休に向かうは白馬岳。今回の目的は雪倉、朝日と続く高山植物の宝庫と蓮華温泉の露天風呂です。

山行記録
2003.8.1
猿倉600−705白馬尻715−900葱平910−1005避難小屋1015−1125水場1130−1215白馬山頂1240−1310三国境−13502504峰1355−1500避難小屋
宿泊代をケチって白馬駅で駅寝をした。昔と違って終電が終わると駅舎から追い出されてしまう。駅の軒下に寝場所を確保したものの、駅前を走る国道を行き交う大型トラックの騒音でろくに眠れない。
5:38、夜行列車が白馬駅に到着すると大勢の登山者が改札から溢れ出て来る。「タクシーでも4人乗ればバスより安いよ。」客待ちするタクシーの運ちゃんの声に誘われて一緒に同乗者を探すが、この運ちゃん、人は良いのだが、見掛けが坊主頭のチンピラ風で全然お客を集められない。彼に代わって営業手腕を発揮し、ようやく3人集めてタクシーに乗り込んだ。猿倉着6:00、山荘のスピーカーに合わせて恒例のラジオ体操が始まった。
猿倉
白馬尻から5、6分も歩けば雪渓に辿り着く。例年ならここから快適な雪渓歩きが楽しめるが、今年は雪渓の状態が悪いようだ。雪渓下部には大きなクレバスが走っており、夏道がこれを避ける迂回路になっているが、これがドロンコ道でズボンの裾まで汚れてしまった。
程なく雪渓に戻ると、ベニガラに沿って登山者が蟻の行列を作っている。先を急ぎたいので、列を離れて進んでみたが、スプーンカットの雪面は硬く締まっておりズルズル滑って歩きづらい。あきらめて蟻の行列に戻り黙々と登る。
葱平、小雪渓、お花畑....稜線まで行列は延びている。
大雪渓
やっとこさ村営小屋直下の水場に辿りついた。今日のゴールは雪倉避難小屋。この先3時間は掛かる。ここでずっしり4リットルを補水した。稜線に出て白馬山頂まで遠かったこと。
山頂からは、杓子・鑓と続く縦走路、黒部谷の向うには剣と雄大な景色が待っているのだが、今日は薄ぼんやりとしか見えない。僅かな晴れ間に写真に納めたつもりでもその時には撮ったつもりも後で見返してみると全てボツ。またの機会に....。
白馬山頂から雪倉方面
三国境の分岐を左へ雪倉へと向かう。周囲は累々と瓦礫が堆積した丘で、まるで建設資材置き場のようだ。草木も生えない中、健気と言うか物好きと言うか、コマクサだけが点々と花を付けている。そうかと思うと、遅くまで雪が残っていたと見えて二重稜線にはチングルマが咲き乱れている。
この先はガレ場、潅木帯、雪田が交互に現れ、それ特有の高山植物が姿を見せる。その種類も多く、密度も濃い、まさに花の山旅。
        .....お花畑のページもよろしく
三国境を振り返る
2504m峰で一休みし、雪倉までのルートを確認する。3箇所雪田を横切るが、さほど危険はなさそうだ。遠目にもルート上のベニガラがくっきりと見える。
先着のオバサン軍団はこれから白馬岳を目指すらしい。出発を促すリダーの声に?どこかで聞いたことがある。NHKの登山教室でお馴染みの岩崎さんでした。そう言えば彼の本業は山岳ガイドっだったっけ。トレードマークのタオルを被り先頭を歩いて行った。
雪倉へのルート 先頭は超有名人 蓮華温泉鉱山道分岐
雪倉岳手前のコルに雪倉避難小屋はある。小屋の近くに雪田があるが、この時期水は流れていなかった。三国境からは途中三箇所の雪田を通るが、そこから給水できる。わざわざ白馬直下から運ぶ必要はなかった。
途中出会ったパトロールのオネエチャンはトイレのハエが煩くて、「あんな所に泊まるなんて信じられない〜。」と言っていたが、実際入って見ると2〜3匹のハエ、大したことはない。内部はきれいに掃除され、避難小屋としては上等な部類だろう。
詰めれば20人は泊まれる広さ。15時に着いたときには、私一人だったが、後から2パーティ到着してこの晩泊まったのは合計6名。この時期の白馬山頂付近の小屋では一畳に2人の勘定だろう。それに比べると天国のようなスペースだ。
雪倉避難小屋 内部
8/02
避難小屋450−530雪倉岳山頂540−640ツバメ平650−800分岐810−925朝日岳山頂930−955千代の吹上1010−1210花園三角点−1310白高地沢1325−1415瀬戸川1425−1510兵馬の平1525−1555蓮華温泉テント場
他のパーティはお花畑をのんびり楽しみながら今日は朝日平泊りということで、ゆっくり朝食の準備をしている。こちらは今日中に蓮華温泉まで辿りつきたいので、一足お先に小屋を出発し黎明の雪倉岳山頂を目指した。一歩一歩高度を稼ぐにつれ、白馬岳、更に剣から立山に掛けての峰々が姿を見せる。夢中で写真に納めていると、思いがけず雷鳥のシルエットが現れた。彫刻のように岩の上でじっとしたまま固まって動かない。頭にのって腹ばいになりながら至近距離まで近づいて撮影した。雷鳥は氷河期の生き残りと言われるが、この先も永遠に生き残りますように.....。
雪倉から白馬方面
シルエット 親子連れ 山塊をバック 2mまで接近
雷鳥4態
雪倉岳山頂を後に道は荒涼としたガレ場をどんどん下って行く。こんなところにと思うが、マツムシソウやシモツケソウ等の花が咲き乱れている。
途中で今朝、朝日平を発った登山者に出会った。大型ザックを背負った彼は九連休を取って、栂海新道を登って槍を目指すと言う。いつかチャレンジしたいものである。
雪倉岳から朝日岳
赤男山の巻き道を行くと潅木帯からひよっこりと湿原に飛び出した。これまで砂礫の高山植物ばかりだったのに、いきなり尾瀬の湿原に飛び出したようで、ミズバショウやリュウキンカが咲いている。このあたりが小桜ヶ原であろう。いくつかの小湿原を木道が繋いでいる。朝日平に定着してこの辺まで足を伸ばすのもお勧め。
小桜ヶ原
木道をトントン進むと、朝日平へ向かう水平道と、直接朝日岳に登る分岐に出る。蓮華温泉にはこの山頂を越えなければならないが、のっけから樹林帯の急登であることが見て取れ、気が滅入るが行くしかない。
朝日岳は山頂近くまで雪田が残っており直下のお花畑にはチングルマやタテヤマリンドウ等湿性のお花畑が見られたのが驚きだ。
朝日岳山頂
山頂を後に雪田の縁を辿りながら下ってゆく。飛び出した広場は千代の吹上と呼ばれる。なるほど、国境稜線上の鞍部で絶えずガスが舞い上がっている。ここは栂海新道の入り口でもある。付近の岩にペンキで書かれた「日本海へ」の道標が雄大だ。
千代の吹上 「日本海へ」
千代の吹上から国境稜線を外れ、五輪尾根下ってゆく。下り始めてすぐに雪田を横切る。この先もいくつかの雪田が現れる。既に8月だが、周囲はまだ雪解けの時期で水芭蕉も可憐な姿を見せている。当然水場も豊富で給水には事欠かない。
直ぐに雪田を横切る
雪田群を過ぎると道はダケカンバの樹林帯に入ってゆく。「五輪の森」の標識を過ぎると、ふと周囲が開け「青ザク」と呼ばれるガレ場に飛び出す。天気がよければ展望が望めるのだろうが今日は残念ながらガスの中。ここにはシロウマアサツキの群生がある。
青ザク
青ザクを更に一下りすると、道は木道になり小さな湿原が次々と姿を見せる。花園三角点はこれら高層湿原群の中心部にある。ガイドブックには斜めに傾いた木道が危険とあったが改修されたのだろう。まともな木道で不安箇所は無かった。
既に12時、このあたりから早朝蓮華温泉を出発した登山者とすれ違う。
コースタイムでは千代の吹上から花園三角点まで下り一時間強だったが、タップリ2時間は掛かった。
花園三角点下の湿原
道はこの先で2本の沢を渡る。昔のガイドブックには雪で潰されV字に折れ曲がった瀬戸川橋の写真が載っていたが、既に立派に修復されて不安は無かった。
白高地沢 瀬戸川
普通の山行ではこの辺から山麓目指して一気の下りになるのだが、このコースはその逆で、最後の登りとなる。特に瀬戸川の橋を渡ると直ぐに始まる急坂には参った。皆同じ思いらしく、オヤジが二人急登の途中で倒れこむように休んでいた。既に行動時間10時間を経て、足はヘロヘロ、心臓バクバク。ビールと露天風呂を念仏のように唱えて、黙々と登る。兵馬の平に辿りついて、しばしベンチでゴル寝。
兵馬の平
今日のゴールは蓮華温泉キャンプ場。最寄の駐車場から10分の位置にありファミリーキャンプ場をイメージしていたが、その手のテントは1割程度しか無く、まともな山屋のキャンプ場だった。
炊事場とトイレがあるだけだが、とにかく広い。山のテント場では、いつも平らな場所を探すのに苦労するが、ここでは逆に何処に張ったらよいか迷ってしまう。
さて設営後は清掃協力金として¥300を蓮華温泉ロッジにフロントに支払い、そのままビールと露天風呂に直行した。
蓮華温泉キャンプ場





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