赤岳から本沢温泉
2001.6.9

6月9日
美濃戸口7:05−8:00美濃戸8:10−8:55(1950m)9:05−9:45(2135m)9:50−10:30行者小屋10:50−11:25(2500m)11:35−12:10文三郎分岐12:20−12:55赤岳山頂13:10−13:35地蔵尾根分岐13:40−14:35三叉峰14:40−14:50横岳(奥の院)15:10−15:35硫黄岳山荘15:45−16:10硫黄岳山頂16:15−16:45夏沢峠16:55−17:30本沢温泉
6月中旬八ヶ岳稜線は雪も消え、高山植物が咲き始めます。今回は行者小屋から主峰赤岳を登り一気に本沢温泉に下りました。日の長い6月ならではの十時間行動で、さすがに疲れましたが、高山植物と露天風呂、そしてカモシカと充実した山旅でした。
夜行急行の残る中央線は駅寝が出来る数少ない路線です。昔は山登りというと夜行列車と駅寝はつきものでしたが、マイカー登山が増えたせいでしょうか、この夜の駅寝族は30人くらいと往時に比べると少数派です。早々にシュラフにもぐり込みましたが、20年ぶりに寝た固く冷たいコンクリートの床で良く眠れませんでした。
早朝6時の一番バスに乗り終点美濃戸口で下車し登山届を出します。山小屋の立ち並ぶ美濃戸から南沢を行者小屋へ向います。
樹林帯に残る雪道 行者小屋から横岳
沢を高巻くつらい登りを終えると登山道は明るい沢筋の道になり、沢を右に左に渡りながら緩やかに登ってゆきます。まだ雪の残る樹林帯を抜けると横岳が正面に阿弥陀が右手に見えてきます。行者小屋の広場では多くの登山者が昼食タイムをとっていました。付近はシラビソに囲まれた快適なテン場が広がっており誘惑にかられますが、水2リットルをザックに詰めイザ出発です。
文三郎尾根
行者小屋を発って文三郎尾根へ向かいます。下からコースを眺めると尾根に刻まれた一本の縦筋にしか見えません。どうやって登るんだろうと思っったら、鎖と鉄階段で強引によじ登る道です。直ぐに心臓はバクバクです。前後する登山者も皆同じらしく、あっと言う間に先がつかえた団子状態になってしまいました。この鉄階段は足元が透けており、下ってくる人にとっては高度感抜群でおっかなびっくりの道です。
赤岳方面の岩峰
間近に見える稜線上の道標が手招きしますが、遠い遠い道のりです。ちなみに行者小屋から赤岳ピストンを目指す場合、地蔵尾根を登り、中岳コルから下るコースを取るのが正解だそうです。いずれも急登ですがここに比べたらまだましだそうです。文三郎尾根分岐に出ると付近はヘナヘナと座り込んだ登山者であふれていました。南アルプスの雄大な景色を期待していたのですが、ガスが掛かってなにも見え無えずに残念な思いです。
阿弥陀岳
この分岐から赤岳を経て硫黄岳までのコースは、北アルプスを思わせる岩稜の道が続きます。特に赤岳山頂までは今日一番の登りです。4本の手足をフル動員して岩に刻まれたルンゼを、鎖を頼りによじ登って行きます。岩峰の立ち並ぶガスの中の道は幽玄な雰囲気をかもし出します。ガスの中にふと道標が見えたと思ったら「赤岳」の文字。最後はあっけなく山頂に着いてしまいました。
赤岳山頂(南峰)
せっかく登った赤岳のピークは劣悪でした。山岳信仰の粗末な社を期待していたのに、真新しいコンクリート造りの社が祭られていました。どこかの新興宗教の仕業なのでしょうか?ただでさえ狭い山頂なのに我が物顔で大きなスペースを占有していました。これにはげんなり。
奥の院鎖場、
一番の難所
横岳の通過はもガレ場、鎖場の連続でしたが、ガスのおかげで高度感が無く、恐怖は感じませんでした。それより、横岳山頂の標識が立っている奥の院から先を見たときガスの向うに薄ぼんやりと見える硫黄岳の姿が意外に大きく、まだまだ先は長いの脱力感に悩まされました。シャリバテ気味の体にバナナチップスを補給し出発です。
硫黄岳山荘のある大ダルミは花で有名なところですが、コマクサやウルップソウはまだ花を付けていませんでした。それでも横岳稜線ではキバナシャクナゲ・ツクモグサ・オヤマノエンドウが楽しめました。
硫黄岳のケルン 硫黄岳避難小屋
硫黄岳は累々とした砂礫に覆われた茫洋とした山です。その上ガスに隠れてどこが山頂か分かりません。こんな天候はこの山域では当たり前なのかもしれません。登山道に沿って連なる大きなケルンが山頂まで導いてくれます。山頂の一角には朽ちた避難小屋が建っていますが、やっと雨露がしのげる程度の粗末なものです。高さ1m位の建物で中を除くと棺桶のようで、廻りの杭は卒塔婆のようで、イザという時でも使いたくない非難小屋でした。
夏沢峠 露天風呂
硫黄岳山頂からケルンに導かれて夏沢峠に下りました。途中見えるはずの雄大な噴火口もあいにくガスの中です。峠からラスト1ピッチ。良く整備された道を飛ばします。シラビソの樹林が消え、硫黄の臭いがきつくなりふと下の河原を見下ろすと露天風呂が現れます。本沢温泉はほんの僅かです。早くテントを張ってタオル片手に温泉だ!とルンルン気分です。

6月10日
本沢温泉6:40−7:45天狗岳展望台7:55−8:40稲子小屋(廃屋)8:50−9:35バス停稲子登山口9:45−10:25JR海尻駅
振り返ると硫黄岳 カラマツ林の一本道
は長い林道歩きが残るだけです。朝風呂を楽しんだ後のんびり朝食を摂りました。昨日はガスで見えなかった硫黄岳が青空にそびえています。心残りですがテントを撤収し一路JR海尻駅を目指しました。周りの林は標高を下げて行くにつれシラビソからカラマツへそして白樺、ブナと変わって行きます。秋の紅葉は見ごたえがあるでしょう。
稲子小屋
一般車を通行制限するゲート周辺には多くのマイカーが停めてありました。更に本沢入口で幅の広い横断道が交差します。殆どの車はここから横断道をバス道路のある稲子湯方面に抜けます。この先も続く一車線幅の林道は登山者だけの道です。6月初旬というのに無数のセミの声が山道に響き渡り、もの悲しさを引き立てます。レンゲツツジ、自生のスズラン、イチヤクソウの群生など誰にも教えたくない穴場のルートでした。
稲子登山口バス停から更に一歩きでJR海尻駅に到着しました。見事に何にも無い無人駅です。下山後の乾杯ビールは小淵沢までおあずけでした。

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