初狩駅ホーム | 自徳寺 | 道案内 |
ぬくぬくの車内暖房で居眠りしてしまった。初狩のアナウンスに慌てて飛び起きると、気のせいか、なんだか体が傾いている。ころがるようにホームに飛び出した。なるほど、この駅はカーブの真ん中にあるので車体が大きく傾いている。 駅前の郵便局から右手に大月方面に戻り、線路下のガードを潜って反対側に抜ける。自徳寺の鐘楼のあたりで、どこからともなく大人しい柴犬が現れ前をすたすた歩いてゆく。どうやら道案内をしてくれらしい。しばらく一緒に歩いていたが、墓地を過ぎるあたりまでが持ち場なのか、そこを過ぎると役目は済んだと戻っていった。おそらく次の客人を待ち受けるのだろう。 |
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伐採地を過ぎしばらくすると男坂・女坂経由の登山口がある。出だしから結構な急登であることがうかがえるので、目先楽そうな玉子石林道を更に進むことにした。どうせ山頂に近づくと一緒の道になると、いつもながら行き当たりばったりだ。この林道は堰堤工事に作られたようで、一番上の堰堤で林道は途絶え山道になる。途中に名前の由来の玉子石があるはずだったが、わからずに通り過ぎてしまったようだ。 |
通過した登山口 | |
西尾根に向かう | ||
もう少しで女坂に合流する手前に西尾根経由の分岐があった。このルートはは少々遠回りのようだが今日は「のんびり歩こう」モードなので、薄い踏み跡に分け入った。あっけなく稜線に出たまでは良かったが期待していた展望は無し。道なりに山頂を目指すが、霜柱の急登を越すとルートは稜線から左にそれて、男坂女坂のルートに合流する。まったく無駄なルート選択だった。 |
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高川山山頂 | 山頂犬ビッキー | 滝子山 奥に南アルプス |
山頂に近づくと茶色の動物がすごい勢いで向かってきた。ぎょっとしていると傍らの雪の上に背中を擦り付け転げまわっている。犬だ。痒いらしい。これが高川山山頂に住み着く有名なビッキーだった。テリア系の雑種なのだろう。口髭を蓄えた仙人のようだ。 こんな山頂で他に餌のあるはずも無く、登山者からもらう餌で飢えをしのいでいるのだろうが、登山者と一定の距離を置きながら程よく餌をねだるお上品な犬だ。こちらが近づくと身をかわして知らん顔だが、ザックを開けると寄って来て、隣で手元を見つめる。こうなると弱い。魚肉ソーセージ2本を貢いでしまった。 もう餌が無いとわかると、定位置の岩の上に戻ってじっとしているが、その視線は常に初狩方面の登山道を見つめている。その様子は健気にも飼い主を待っているようにも見え、思わずじわっとしてしまう。 |
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山頂から富士山 | ||
田野倉分岐からむすび山 | ||
ビッキーに別れを告げ、山頂を後にした。結構急な下りが続く。高川山はどちらのルートも山頂直下で難渋させられるようだ。加えて日が高くなるにつれて霜柱が緩みずるっと滑る。すぐにスパッツは泥だらけになった。 途中で何箇所か左に禾生や田野倉方面に下る道がある。そろそろ下ろうかと思ったら、「むすび山」の表示が出てきた。地図には載っていないがこの先も明瞭な道が続いている。時刻はまだ昼前だし、ユニークな山の名前に惹かれて尾根沿いに大月まで歩くことにした。 |
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峯山 | 新しい道かと思ったが、休憩ポイントには朽ち掛けた手作りのベンチが設置されていた。結構昔から歩かれているのかもしれない。ルートは程よく整備され不安は無いが、道標の類は一切無い。途中手作りの「峯山」の表示があったが、どこまで行ったら「むすび山」に着くのだろう。小さなアップダウンを繰り返しながら道は延々と続いている。 |
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伐採地 | ||
今日はまだ3月初旬と言うのに汗ばむような日差しだ。特に峯山を過ぎるあたりから南面に伐採地が広がり、まともに照らされる夏場にはお勧めできないコースだ。 途中、すれ違った中高年パーティに猿の大群がいるので気をつけろと言われた。おっかなびっくり歩いてゆくと、ざっと数えて二十匹くらいの群れがいた。標高500mくらいの人家の裏山でこんな猿に会うとは伐採によって餌場を奪われたのだろうか。 |
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もう市街地に降りようかというころ「むすび山」に着いた。山というより小高い展望地だ。傍らの説明文によるとここは戦時中、アメリカの爆撃機の襲来を監視する施設だったそうだ。双眼鏡と聴覚で機影を捉えていたとはあまりにも芸が無い。サイパンから飛び立った爆撃機は富士山を目指して北上し、上空で東進して東京を、西進して中京を空爆したという。富士山も良い迷惑だったことだろう。名前に惹かれて訪れた「むすび山」は悲惨な戦争の爪あとを残す展望台だった。 |
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九鬼山 | N社大月工場 | むすび山 説明文 |