小金沢連嶺から牛の寝通り
2004.4.30〜5.1

MAP

「やば!」起きたのは6時。今朝は始発電車に乗り、甲府から臨時バスを乗り継ぎ、夜叉神峠そして鳳凰三山を目指す予定だった。土砂崩れの為、昨年来不通だった広河原線の夜叉神まで、GWに限ってバスが運行される。昨晩遅くまでテントやシュラフをパッキングし、インターネットでバスの時刻を調べていたのに....さっさと寝ればよかったと思っても後の祭り。さあてどうしようか?立ち直りの早いB型人間が考えた次のプランは小金沢連嶺です。直接笹子駅から登れるから、電車の時刻を気にすることもない。ズミ沢沿いの登山道には春の山野草が待っている。寝ぼけマナコで家を出発しました。
笹子駅を降りたのは数名の中年の登山者だけですが、駅前でぐずぐずしている間に、皆何処かに行ってしまった。笹子峠や本社が丸に向かったのだろうか、20号線を東に歩いているのは私一人だけ。笹子餅の「みどりや」、笹一酒造の「酒遊館」を過ぎると田園風景が広がる。
田圃には水が張られ田植えも近いのだろう。それにしても暑い。予報によると今日の気温は23度と初夏の陽気だ。歩き出して早々にシャツを脱ぎ、Tシャツ一枚になった。
道証地蔵から林道を離れ登山道に入る。ズミ沢沿いを高巻いたり河床に降りたりしながら高度を上げてゆく。ミズナラなどの広葉樹の谷は明るく、タチツボスミレやヘビイチゴの群生が足元を彩って気持ちが良いが、陽気に誘われて大嫌いなヘビ(まだ熊のほうがまし)もあちこちでがさごそやっている。
ズミ沢のナメタキ
大谷ヶ丸に到着したのは既に14時をまわっていた。予定より一時間遅い。山野草の撮影に時間をとられてしまったようだ。山頂には単独行の男性が一人だけ。大きなザックに目を留め声を掛けてみると、彼も湯ノ沢峠でテント泊し、翌日は小金沢連嶺に向かうらしい。こんなマニアックなコースを目指す人がいてちょっぴり嬉しくなる。2時間後に追いついた彼は、湯ノ沢峠手前のお花畑の一角にテントを張っていた。なるほどここなら南アルプスの絶好の展望台になる。
こちらは混んでたら近くにテントを張れば良いやと、避難小屋まで行ってみる事にした。すでに17時と小屋に到着するには遅い時刻だ。果たして自分の泊まるスペースがあるのか?立付けの悪い引き戸を「こんにちわ」と恐る恐る開けると、あれ〜誰もいない。そして、小屋の隅には布団が山と積まれ、驚くことに天井には蛍光灯がある。ほんまかいなとスィッチを入れるとちゃんと点くではないか。予定通り鳳凰三山に行っていたら、南御室の雪上テント泊だったが、一転して...いや茶々(猫)に圧し掛かれて寝る我が家より快適な一夜となった。
狼平から石丸峠 小金沢連嶺は小さな登り下りがあるだけの高原状の縦走路だ。とは言っても寝起きから急登を強いられる白谷丸の登りはきつかった。どんより曇り空で、励みになるはずの富士山も薄ぼんやりとしか見えない。それでも黒岳を越え、笹原と樹林帯の道を、川胡桃沢の頭、牛奥ノ雁ヶ腹摺山と順調にこなして行く。笹薮に覆われて道が不明瞭ではと心配したが、道型はしっかりしていて心配ない。樹林帯の方が踏み跡が広がり薄くなりがちだったが、不安を感じるところはまったく無かった。
小金沢山はこの稜線で最高の標高を持つが、標識が無いと知らずに通り過ぎるような小ピークだ。このあたりから、南下する登山者とすれ違うようになった。このコースは山慣れた少人数にお勧めだが、中には場違いのパーティもいる。異常に大きなザックを背負った、10人くらいの学生パーティとすれ違った。元気な声で「おはようございます」「こんにちわ」と声を掛けてくれるが、その割に足が進まない。おいおい、TOPが停まっちゃったよ。ええ〜、皆へたり込んで休んじゃうよ。ピークまであと3分。こんな急坂の途中で休んだら、邪魔になるなんて野暮なこと言わないけれど、降ろしたザックが転がっちゃうよ。と心の中でつぶやいて、はいさようなら。
このまま北上し、30分も歩けば大賑わいの大菩薩峠ですが、静かなコースにこだわって、石丸峠直下から牛の寝通りに入りました。のびやかな下り道を4時間半掛けて小菅村営の「小菅の湯」にゴールイン。
GWと言うのに、初日に出会ったのは3パーティ5人、翌日は5パーティ20人と静かな山行が楽しめました。地味な山域ですが、最初頑張って登ってしまえば、さほど標高差の無い草原や笹原の縦走路です。その上、展望の良いビザークサイトにもこと欠きません。富士山がきれいに見える季節に是非再訪したいものです。
牛の寝通りにあった手作りの道標

<山野草>


山行記録
04.30
笹子駅9:25−9:55桜公園−10:00寂ショウ庵分岐−10:35道証地蔵10:40−11:55曲沢峠分岐12:00−13:20滝子山分岐13:30−14:25大谷ヶ丸14:35−14:45米背負峠−15:10天下石−15:50破魔射場丸16:00−16:25大蔵高丸16:40−17:00湯ノ沢峠
桜公園
今日の気温は23度と初夏を思わせる気候です。まだ笹子駅から30分くらいしか歩いていませんが、すでに汗だくです。
寂ショウ庵分岐
密かに寂ショウ尾根から滝子山経由も考えていましたが、コースタイムを読むと次回のお楽しみにしたほうが良いと諦めました。
道証地蔵
林道は更に奥まで延びていますが、登山道はこのお地蔵さんから左の沢に向かって踏み入ります。

ズミ沢は高度を上げるにつれ、滝が連続で現れる。新緑の中、マイナスイオン一杯の道だ。


花道
野辺の花も負けていない。タチツボスミレ、ヘビイチゴが今を盛りと咲き誇っている。
滝子山分岐
2月には、ここから滝子山方面へ雪道を歩んだが、今日は左へ大谷ヶ丸方面の作業道に入る。今日はまだ誰も歩いていないのか?歩くにつれて蜘蛛の糸がまとわり付く。
大谷ヶ丸
山頂は樹林に覆われているが西側が開けており南アルプスがよく見える。
大きなザックを背負った単独行の男性が先発した。彼は湯ノ沢峠手前のお花畑の一角にテントを張っていた。
天下石
岩峰をイメージしていたが、潅木帯の中にごろり転がる大岩だった。ここから破魔射場丸に掛けてカヤトの草原が広がる。
破魔射場丸から
破魔射場丸から後方を振り返る。右奥に大谷ヶ丸、滝子山が見える。
破魔射場丸から
同じく破魔射場丸から富士山を望む。すでに夕暮れ時、薄ぼんやりにしか見えない。
大蔵高丸
大蔵高丸から黒岳を望む。今日の登りはここまで、後は下り20分で峠に着ける。
湯ノ沢峠お花畑
今は何も咲いていないが、夏になるとマツムシソウ等のお花畑になるらしい。
湯ノ沢峠
今日はここまで。避難小屋はここから西側に100mほど下った駐車場脇にある。

湯ノ沢峠避難小屋
ここは15人くらいの広い間取りに布団付き、更に電気が通じており蛍光灯が灯ります。トイレが無いのが玉に瑕ですが水場も近くこれまで利用した避難小屋の中ではBESTの小屋です。GWの最中にもかかわらず、この小屋に貸切で泊まりました。
外観 水場 布団付き


05.01
湯ノ沢峠4:50−5:30白谷丸5:40−6:00黒岳−6:30川胡桃沢の頭6:35−7:20牛奥ノ雁ヶ腹摺山7:25−8:10小金沢山8:20−9:00狼平−9:20牛ノ寝通分岐9:25−10:05水場10:20−10:45雄滝分岐−11:55ショナメ−12:10大タワ12:20−13:05モロクボ平13:10−14:00小菅の湯
白谷丸
朝一から急登は結構きつい。白いザレ場を抜けそこが山頂と思ったら更に登りが待っていた。草原の快適な登りなので許そう。ここでテントを張るのも楽しめそうだ。
黒岳
山頂は樹林で覆われている。展望も無くさっさと通過する。大峠への分岐は山頂から少し先に下ったところにある。
稜線沿いの道
次のピークである川胡桃沢の頭まではアップダウンの無い稜線沿いの道だ。苔むす登山道は奥秩父の雰囲気。
川胡桃沢の頭
今回のルートは伸びやかな道筋で、随所に快適なビバークサイトがある。私の選んだベストポジションはここ川胡桃沢の頭のピーク。東側は適度に樹林に囲まれ、西側は富士山や南アルプスの展望が楽しめる。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山
笹で覆われた賽の河原から牛奥ノ雁ヶ腹摺山を望む。山頂の展望は言うまでも無い。
小金沢山
2014.3mと今回の山行で一番標高が高いが、あまりぱっとしない。標識が無かったら気づかずに通過してしまいそうだ。

狼平は一面の笹原で覆われている。その向こうに石丸峠、振り返ると黒岳が連なっている。
石丸峠 小金沢山

牛の寝通り分岐
石丸峠とそのひとつ前のピーク、天狗棚山の鞍部に分岐がある。脇にある東屋は朽ち果てており使えない。
水場
あまり利用者が居ないのだろうか?極端に道標が少なくなり、現在地が良く判らなくなる。標高1500m付近で送電線の巡回路が分かれる。その水平道に入り2〜3分に水場がある。水流は少なくコップ一杯満たすのに一分くらい掛かる。
登山道
下り一辺の歩き易い道だが、とにかく暑い。冬枯れの季節が最適だろう。ところどころにトウグクミツバが色を添える。
ショナメ
どんないわれがあるのだろう。雑木に括り付けられた「ショナメ」の手作り標識に大ダワが近いことを知る。
大ダワ
新緑の向こう、山並みの彼方に飛竜山が見える。
大ダワ分岐
分岐には小屋掛けがある。結構頑丈そうで緊急の時には使えそうだ。ここから小菅の湯へ下り2時間が長かった。
小菅の湯
¥600/人
この手の施設にしては浴槽も食堂も立派。個室も多く、家族連れで食事+温泉を楽しむには最適。一人旅の山屋にはちょいと過剰施設気味。
村営バス時刻表
田元橋のコイノボリ
GWとあって田元橋近くにコイノボリが掛かっていた。ここから一路、奥多摩駅までバスで一時間。
西東京バス時刻表


<山野草>


大月市
小菅村