鹿島槍ヶ岳、五竜岳
2005.9.17-18


高山植物



山行記録
2005.9.17
新宿23:54===ムーンライト信州===5:08信濃大町5:15+++5:40柏原新道登山口−6:45ケルン−9:00種池山荘9:05−9:55爺ヶ岳(南峰)10:00−10:10北峰10:15−11:10赤岩尾根分岐−11:20冷池山荘11:35−11:45冷池テン場

松本が近づくとそれぞれの駅で降りる登山者で車内は騒がしくなる。「うるさいなあ〜もう少し寝かせてくれよ〜。」前日の飲み会の酒で頭がぼお〜としている。「次は信濃大町、信濃大町」のアナウンスにふと我に返る。「やば。寝過ごした。」今回は穂高駅で降りて燕から槍を狙っていたが、今となっては後の祭りだ。とりあえず信濃大町で降りたが、さて何処へ行こうか?タクシーの運ちゃんに急かされながら、気が付くと扇沢へ向うタクシーに乗っていた。こうなったら同じ槍でも鹿島槍だと、運ちゃんに問われるまま「鹿島槍から五竜へ縦走します。」と調子の良い返事をしてしまった。

柏原新道をえっちらおっちら登り始めたが、テント二泊分のザックが重い。後続者に抜かれた。また抜かれた。最近登りはコースタイムをキープするのがやっとだ。
この7月末には針ノ木から種池へ縦走し、このコースを下ったが、種池の見事なお花畑は既に終わりを告げ、コバイケイソウも立ち枯れていた。

柏原新道登山口 針ノ木岳稜線 爺ヶ岳

先行していた登山者の多くはは種池や爺ヶ岳で大休止をしていた。別段急ぐつもりは無いが、とにかく眠い。早くテン場に着いて横になりたかった。
正面に鹿島槍を眺めながら、爺ヶ岳から緩やかに下ってゆく。この時刻になると雲が沸き揚がって鹿島槍のピークを隠してしまう。

冷池山荘で受付を済ませ、これからが最後の難関だ。ここのテン場は更に十分近く登らなければならない。買い込んだ2リットルの水が恨めしい。殆どグロッキー状態でテン場に到着した。早速テントを張って何はともあれまずは爆睡。稜線を吹く風が心地よい。なにより寝転びながら剣を拝めるのが嬉しい。
夕方あたりを散策した。布引方面にしばらく行くとお花畑が延びているが、この時期にはリンドウが僅かに咲き残っているだけだった。鹿島槍はガスにすっぽり覆われていたが、剣は夕日が沈みかけている雲の切れ間に姿を見せていた。
深夜、ふと目を覚まし外の異様な明るさに引かれてテントから這い出した。満天の星空に月がひときわ輝いていたと文章で書くと陳腐な表現になるが、これほど異様に明るい月夜は記憶に無い。まさに仲秋の名月、神秘的でもある。さてキツネに化かされ歩き出す前にテントに戻ろう。明日の好天を信じて、またまた爆睡。

鹿島槍 冷池小屋 テント内から剣

2005.9.18
冷池テン場5:00−5:45布引山5:50−6:30鹿島槍ヶ岳(南峰)6:35−7:00吊尾根分岐(北峰)7:20−8:15キレット小屋8:30−9:30口沢ノコル9:35−10:05北尾根の頭10:10−12:10五竜分岐(五竜岳)12:20−13:00五竜山荘13:10−14:10西遠見−14:30大遠見−15:05中遠見15:25−15:45小遠見−16:30地蔵の頭下(リフト乗場)16:45−17:00アルプス平−17:10とおみ17:15−17:30JR神城駅
今日は長丁場だ。5時にはテントを撤収し鹿島槍を目指す。暗闇の向こうには、それとわかる双耳峰のシルエットが浮かんでいる。快晴の気配に気が逸るが、後続の登山者に次々と抜かれた。負け惜しみではないが、見ると連中は空身ではないか。山頂で日の出を拝もうと小屋に泊まっている登山者がペットボトルだけぶら下げて登ってくる。鹿島槍も冷池からピストンする限りはルンルン気分の穏やかな山容だ。布引山を過ぎたあたりで日の出を迎えた。 布引稜線から鹿島槍

鹿島槍北峰から南峰

鹿島槍に登ったら、吊尾根の向こうに対峙する北峰に登るのをお勧めしたい。正面に凛と聳える鹿島槍南峰の両脇を剣と針ノ木が固め、その奥には槍穂が見える。そして北方にはこれから辿るキレットの峰々が連なっている。五竜の向こうは白馬だろう。絶好の展望台だ。
遠目から見ると、切り立った急斜面のどこに登山道があるのだろうと思えるが、近づいてみると確かに黒部側に細々と道が延びている。ルートは時折カクネ里側に出るが、ここがまたすっぱり切れ落ちて高度感満点だ。前後して歩いていた夫婦連れもいつしか後ろに遠ざかり、奥さんの悲鳴しか聞こえない。ここで落ちたらマジヤバと緊張を強いられる。

これから辿る縦走路 カクネ里 八峰キレット核心部 キレット小屋


ようやく岩峰の向こうにキレット小屋が見えた。安心したのもつかの間、「これより20分がキレットの核心部」の看板に泣きそうになる。垂直の壁をつたうように鎖、梯子、桟道のオンパレードだ。短い梯子を降り、小屋の前に立ったときにはさすがにホットした。
キレット小屋はどうやって建てたんだろう。猫の額ほどの僅かな鞍部建っている。この険路を行き交う登山者にとってまさにオアシスだ。そして正面には剣がどお〜ん。
だらだら登りの北尾根の頭を越え五竜が近くなってきた。すれ違う登山者に「凄い道でしたよ。」と声を掛けると向こうも負けていない。お互い自分の通ったルートを自慢したがるものらしい。これから更に難所が待ち構えているとも知らずに.....。 正面に剣 北尾根の頭
赤抜 G5クサリ場 赤抜けのザレ場やG5の鎖場は八峰キレットと良い勝負だった。いや、疲労がたまっている分、体力的にはきつかった。G5を越えた僅かな平場に思わずへたり込んでしまった。
五竜岳山頂へのラスト1ピッチは最後の難関、体力勝負だ。ここまで三点確保の連続で上半身が痛い。山頂に人影が見えるのが救いだ。あそこまで行けば楽になる。
五竜岳ラスト1ピッチ 五竜ピーク 五竜山荘

山頂直下ですれ違った登山者に声を掛けられた。「テントですか。重そうですね。」ヘロヘロな姿を憐れんだとしたら、余計なお世話だと心の中で悪態をつく....「お前に行く手には地獄が待っている。せいぜい泣き叫ぶことだ。」

五竜山荘着13時。さてどうする、微妙な時刻だ。下界に居る時には山を想い。山に入ると里心がつく。まったく勝手なものだ。ゴンドラ最終時刻から逆算すると、コースタイム下り4時間を3時間で行けば今日中に自宅に帰ることが出来る。いや2時間まで短縮すれば麓で温泉に入ることも出来る。廻りのベンチでは今日の行程を終えテラスでビールを飲みながら盛り上がっているが、一人あくせくと行動食を摂り終え、ラストスパートと飛び出した。

西遠見から遠見尾根上部 西遠見の池 中遠見

歩き出して一時間、大きく下って小ピークに着いた。地図を見ると、どうやら西遠見付近のようだが、このペースではコースタイム短縮になっていない。間に合わないかもしれないと不安がよぎる。もう休めないぞと気は焦るが、行動時間10時間を越えた体力は限界に来ていた。遥か彼方にリフト施設が見えるが、限られた時間では着きそうも無い。そして中遠見、ピーク手前にある標高差30mほどの階段が効いた。もう足が動かない。ピークでくたびれはてていると、後続者が追い付いてきた。単独行同士、普通ならお互い遠慮して休憩場所をずらすのだが、相手もザックを下ろすともう腰が上がらない。相手は今朝天狗を発ち唐松岳を越え五竜山荘泊まりの予定だったが、山荘前の「本日は一畳に2〜3人」の張り紙を見て、こりゃたまらんと降りてきたらしい。開き直って20分ほど会話しただろうか。終電に遅れた酔っ払い同士がベンチでクダを巻くのと同じだ。いざとなったらゴンドラの止まったゲレンデを歩いて降りよう。日の明るいうちにはなんとか降りられるだろう。もし係員が残っていて交渉出来るなら人数は多いほうが良い。人心地付くと一緒に歩き出した。
地蔵のケルンが見えた辺りで「誰かいるなら叫んでください。」と遠くから係員の声がする。大声でこれに応え所在を知らせた。さながら救援隊に呼応する遭難者の様だ。既に30分程タイムオーバーしていたが、特別の計らいに恐縮しながら貸切のゴンドラに乗り込んだ。


高山植物




信濃大町
白馬五竜
アルピコ