濡れたザックを背負って平湯行きのバスに乗り込んだとたん、乗客から「おお〜」と歓声が上がった。車窓から、それまで厚い雲に覆われていた稜線が嘘のように晴れ上がっているのが見えた。三連休の中日、明日も休みだ。戻って西穂高にアタックしようかとも思ったが、一旦下がったモチベーヨンは復活するすべも無く、まあじたばたしてもしょうがないと新穂高を後にした。
思えば今年はすっかり雨男になってしまった。6月の早池峰以来ずっと雨にたたられいる。下界では記録的な猛暑が続いているのに、雨の日を狙って出かけているとしか言いようが無い。 |
山行記録 |
2004.09.18
新穂高6:00−7:20登山口7:25−8:55(1800m)9:00−11:35杓子平11:50−13:20稜線分岐−14:15抜戸岩−14:40笠ヶ岳キャンプ場 |
夜行バスの狭い座席でまどろんでいると突然バスが止まった。こんな山奥で渋滞か?と思っていたら乗務員が外に出てザックを降ろし始めた。「終点です。降りてください。」と言う。半信半疑で外に出ると正面に薄暗い穴毛谷が不気味な姿を見せている。まだ6時前、定刻より一時間も早い到着に、村営食堂の軒下で仮眠を取るツワモノもいた。 |
笠新道口 |
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旅館街を抜け左俣林道を奥に進む。新穂高は今まで下山口として何度と無く訪れているが、ここから入山した記憶は無い。しばらく楽な林道歩きのはずが、こんな上り坂だったかなとぼやきたくなるころ笠新道口に着いた。
笠新道口にはこれからの急登に備え多くの登山者が準備していた。ひときわ目立つ関西弁のおばさま連中がいた。ヨン様風の山岳ガイドを囲んでまあ賑やかなこと。
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2000m付近 |
笠新道は北アルプス三大急登に数えられる。他の合戦尾根やブナ立てはたいしたことが無いがここは文句なしにきついコースだった。1350mの登山口から稜線まで標高差1500mを一気に登る。ガイドブックにも「先は長い。ペースを掴むまで、出だしはゆっくり登ろう。」とあるが、20分登って10分休憩の超スローペースは最後まで変わらなかった。もっとも他のパーティも似たようなもので、同じ場所で休憩を繰り返すたびにすっかり顔馴染みになってしまう。賑やかなヨン様ご一行とは途中まで抜きつ抜かれつだったが、杓子平で大きく水を空けられてしまった。
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杓子平紅葉 |
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潅木帯の急登を登り切るといきなり広場に飛び出した。ここは杓子平の末端で正面には雄大なカールが広がっているはずだが、今日はすっぽりとガスで包まれていて、何も見えない。登山道脇の草付にはチングルマの葉が続いている。初夏には素晴らしい高山植物の群生に覆われるのだろう。
地図を見ると登山道はカールを横切り稜線の鞍部に突き上げるようだが、どうも様子が違う。落石防止で道が架け替えられたようだ。新しい道は抜戸岳から延びる枝稜に取り付きぐんぐん高度を上げてゆく。高度計は既に2800mを示し、殆ど抜戸岳と同じ標高になった頃、ようやく稜線に辿りついた。予期しなかったプラス100mの登りにすっかり参ってしまった。 |
稜線に辿りついた |
道標は稜線を乗越して巻き道にある |
旧稜線分岐 今は通行止め |
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ガスの稜線 |
分岐から笠ヶ岳キャンプ場にラストスパート。晴れていれば笠ヶ岳を正面に左には穂高を眺めながら快適な稜線漫歩のはずだがガスの中を黙々と歩く。雨模様に一気にテント場まで飛ばしたいところだが、蓄積した笠新道の疲れに思うように前に進まない。抜戸岩を通過し一登りするとガスの向こうからテントがぼお〜と見えてきた。今日の行動はここまで。しと降る雨の中、早速テントを張って潜り込んだ。 |
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笠ヶ岳の山頂 |
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行ったところで何も見えないのは判っていたが、このキャンプ場には水場が無く、この先にある山小屋まで貰いに行かなければならない。そのついでと自分に言い聞かせて山頂に向かった。案の定、視界ゼロ。証拠写真を撮ったら、他にすることも無く誰も居ない山頂で一服タイム。今日は休みの回数が多かったせいで煙草の減りが早い。カミサンに電話すると息子とランドマークタワーにいると言う。横浜でも曇り空だそうだ。
明日は笠ヶ岳を越えクリヤ谷を下山の予定だ。途中でこのコースを登ってき方に様子をうかがうと「踏み跡は薄いがコース自体は心配無い。入山者は少なく数人に会ったのみ。」まあ何事も天気次第と水を確保してテントに戻ると雨は本降りになってきた。 |
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2004.09.19
笠ヶ岳キャンプ場6:15−7:10稜線分岐7:30−8:10杓子平水場8:40−9:25(2200m)9:30−10:10(1800m)10:25−11:15登山口11:20−12:05新穂高 |
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抜戸岩 |
ゆっくり朝食を摂り、それ以外をパッキングしてテントの中でしばらく様子を見るが一向に雨は降り止まない。他のテントはしんと静まったままだが、既に6時と行動を開始する時刻だ。後で考えれば予定通りクリヤ谷を降りても良し、もう一泊覚悟で双六方面に向かっても良しだったが、同じ道を戻るのが一番安全と笠新道を下ることにした。気ままな一人旅と言えばそれまでだが最近は何とか理由を付けて一番安易な道を選ぶことが多くなってきた。 |
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分岐から、もう少しで笠が見えるのに |
分岐から抜戸岳 |
チングルマ |
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杓子平目掛けて下る |
杓子平水場からカールを見上げる |
シラタマの木 |
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左俣の河原が見える |
西穂の稜線?1,800mから |
新穂高に到着 |
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悔しいことに稜線分岐を杓子平へ下る頃から天候が回復してきた。新穂高に到着すると盛夏を思わせる日差しに、ザックから濡れたテントや雨具を引っ張り出して天日乾し。そしてさあビールだ。温泉だ。 |