早池峰山
2004.6.26


ナンブイヌナズナ

お花畑

「早池峰一日雨、下りでこけて指先負傷。今日の夜行で帰る。」に対するかみさんの返信は「横浜は快晴。残念でした。」梅雨前線を避け北上すれば大丈夫と読んだが、裏目にでてしまったようだ。金曜日の角田工場出張に引っ掛けて仙台から高速バスで盛岡へ向かった。駅前のカプセルを拠点に高山植物咲く早池峰、秋田駒が今回のお題だったが初日の雨天に嫌気が差し、早池峰だけで帰ってしまった。
盛岡から小田越えに向かう直行バスは今日からシーズンの運行を開始する。張り紙にはそうあるが時刻が迫ってもだれもやって来ない。どこからとも無く小型のバスがやってきた。明らかに通常のバスの二廻りほどちいさい。発車ぎりぎりにやってきた学生風の一人を加え、乗客2名でそぼふる雨の中を出発した。
早池峰は二度目の訪問である。たけさんと馬場と三人で訪れたのは、角田工場に配属された年の秋だから二十数年前のことである。朝角田を発ち、小田越えに着いたのは既に昼下がり。夕暮れのうすぼけたなか山頂避難小屋に辿り着き、一夜を明かしたが景色を眺めた記憶が無い。あのときも悪天候だったのだろう。どうも早池峰とは相性が悪い。
盛岡から二時間弱で小田越えに着いた。バスは雨の中に二人を降ろすと走り去ってしまった。学生風の兄ちゃんは、山頂を越え門馬に下りるそうでさっさと出発したが、こちらはぐずぐずしている。と言って雨の中で腰を下ろすところも無い。せっかくの東北遠征なのにモチベーションの低いまま、やっとこさ歩き出した。
出だしは木道の道だが、十分も歩くと森林限界を越えた。晴れていればゆったりとした山容が眺められるはずだが、ガスの中で何も見えない。足元に咲くオダマキやミヤマシオガマが救いだ。花の写真をとりながらゆっくり歩いてきたつもりだが、2時間強で山頂の一角に立つ避難小屋に着いた。以前泊まった小屋は建て替えられたのだろう。内装の感じはまだ新しかった。二階建てで20〜30人は泊まれる広さだ。
同じコースを下るのは芸がない。下りは河原の坊を目指した。この下りで見事にこけた時、右小指を岩にしたたか打ち付けてしまった。外傷はたいしたこと無いが、見るも無残に青紫に膨れ上がっている。傘を差しながら下った。滑りやすい蛇紋岩の道。磨り減ったビブラム底と悪条件が重なったことによる。このコースは河原の坊から登り小田越えに降りるのがリーズナブル。と今更分析しても意味が無い。ただでさえ低かったモチベーションは更に急降下。明日の秋田駒を諦めて今晩帰ることにした。
河原の坊には立派な休憩所がある。フローリングの床はピカピカで靴を脱いで上がらなければならない。いかにも山に登ったことの無い役人が考えそうなつくりだ。見ると「宝くじの普及のために施設」とある。因果関係がよく判らないが私の外れくじもお役に立っているのだろうとゆっくりさせてもらった。盛岡へ帰るバスは私一人。運転手は来たときと同じ女性ドライバーだ。シーズン初日なのに往復で3人の乗客じゃあ儲からないだろうなあと余計なことを考えながらいつしか、うとうとと。
山行記録
06.26
小田越8:35−9:55五合目−10:15鎖場−10:35剣が峰分岐−10:55山頂避難小屋11:30−12:15打岩−12:50頭垢離13:00−13:45河原の坊
小田越え登山口
しと降る雨に気持ちも萎えるが、こうしていても始まらないとトボトボ歩き始める。
木道の脇にはマイズルソウやカラマツソウ等の林床の花が咲く。
五合目
蛇紋岩の岩を縫うように道は登ってゆく。ここには他の山域にあるようなペンキマークは無い。その代わり道の両側にロープが張ってある。ウスユキソウやキバナノコマノツメ等砂礫の花が多い。
長い梯子
斜度は無いが大岩を二段の梯子で乗り越してゆく。今回は誰も居なかったが混雑時には渋滞になるだろう。
固有種のナンブイヌナズナの黄色い群生が印象的。
山頂近くの木道
ガスの中を登って行くと剣が峰分岐の道標が突然現れ、木道が延びる。このあたりから山頂の一角だ。お田植え場と呼ばれる湿地帯がある。この山域では珍しくショウジョウバカマやチングルマ等湿性の花が咲いている。
山頂避難小屋
立派なトイレがある。し尿は地元ボランティアが担いで下ろすそうだ。中高年の団体さんが大賑わいで休憩中。こんな仲間にはなりたくない。
山頂
小屋の数十m先が山頂だ。鉾をかたちどった標があちこちに立てられており、古くから山岳信仰の場であったことが偲ばれる。
急な下り
うっすらと隣の稜線が見えたと思って撮った写真だが薄ぼんやりでなにも判らない。蛇紋岩の急な下りに緊張の連続。それでもこけてしまった。
打岩
早池峰山は日本で最も古い地層から成り立っている山域の一つだそうだ。長年の侵食に取り残された岩峰が霊山の雰囲気をかもしだす。
頭垢離
河原の坊への道はコメガモリ沢に沿って延びている。上部から沢音が聞こえているが最初に流れに出会うのがここ頭垢離。登りでは最終水場になる。晴れていれば主稜線がガスの向こうに見えるはず。
渡渉
沢沿いの緩やかな下り道になっても油断できない。ロープの張られた渡渉点が3箇所ある。増水すればちょっと怖い。
河原の坊登山口
最後の渡渉点を越えると直ぐに車道に出る。バス停の向こう無料休憩所がある。

お花畑


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